
採用基準について考える
「応募者が少ない」
「求める人材を採用できない」
採用がこのようにうまくいっていない時に、
多くの採用担当者がまず考えることは、
「それでは採用基準を下げようか」
ではないでしょうか。
しかし、採用基準は安易に下げてはいけません。
このレッスンでは、
採用基準を下げて良いのはどういう時なのかと、
採用基準を下げることのデメリットについても
学びましょう。
採用基準を下げる時
採用基準を下げてもいいのは、次の条件が整っている時です。
それは、
- 育成体制が万全であること
です。
企業が新たに人材を採用する時、それは、
「何らかの事情があり人が足りなくなったから」
でしょう。
それを埋めるには、
そのポジションに就いている人と同等の能力やスキルが必要です。
採用したばかりの人がそのポジションに就くには、
「即戦力になる人が就くか(採用基準に則った人)」、
「教育をして戦力になるよう育てるか」
のどちらかになります。
即戦力になる人が採用できなくて採用基準を下げ、
求める能力に満たない人材を採用するなら、
教育体制が万全でなければなりません。
しかし、教育環境を整えるのは大変ですし、
育成には時間を要します。

蛇足ですがもう1つ、採用基準を下げても良い時があります。
それは、「顧客に提供するサービスの質を下げても良い時」
となります。
採用基準を下げ、教育もしないのであれば、
必然的にサービスの基準は下がるのは当然です。
しかし、サービスの質を下げるという選択肢を取る経営者はまずいないでしょう。
採用基準を下げるデメリット
①育成のコストがかかる
採用基準を下げるのは入社後の育成が大前提となるので、
必然的に育成のための金銭的コストがかかります。
また育成するためには社員の時間を割かなければならないので、
時間的コストもかかります。
さらに、既存社員は自分の業務をこなしながら育成しなければならないので、
育成について試行錯誤したり、うまく育たない場合に悩むなど、
精神的なコストもかかります。
②戦力化まで時間がかかる
採用基準を下げなければすぐに戦力となったはずなのに、
育成をしなければならないので戦力になるまでには一定の時間がかかります。
育成にはどの程度時間をかけるかあらかじめ決め、
その上で育成プログラムを考える必要があります。
③戦力にならない可能性がある
育成前提で採用し、教育に時間をかけても、
いつまでたっても芽が出ず、戦力にならない可能性もあります。
金銭的、時間的、精神的コストをかけても、
無意味に終わることもあると覚悟しなければなりません。
④採用のミスマッチが起こる
採用基準を下げて、急いで人材の確保をしようとすると起こること、
それが採用のミスマッチです。
ミスマッチが起こると、人材を確保してもすぐに辞めてしまい、
また採用しなければなりません。
採用活動の目的は採用ではなく、
確保した人材が会社の目標達成のために貢献することであることを、
忘れてはなりません。
⑤求めていない人材の対応に時間がかかる
採用基準を下げることで、
思っていたよりも応募者が増えてしまう可能性があります。
採用基準が緩和すれば、「もしかしたら自分も採用されるかも」と、
応募者が増えるのは当然です。
これまで応募者が少なかった場合は一時的に応募者が増えるでしょうが、
蓋を開けてみれば、求める人材が全くいないなんてこともありえます。
そうした場合、自社の基準に満たない応募者への対応に追われ、
業務が増えるだけで採用はできない・・・ということもあります。

⑥顧客からの信頼を損なう可能性がある
採用基準を下げて採用した場合、
これまでそのポジションに就いていた社員のパフォーマンスを
満たせない可能性があります。
パフォーマンスが下がると、顧客の満足度も下がるでしょう。
顧客の評価は一度下がると、なかなか元に戻すことはできません。
採用基準を見直す
採用基準を下げるのは、これらのデメリットがついてくるので、
よく検討すべきです。
採用基準を下げる前に、まずはその基準を見直してみましょう。
Lesson6-2 「採用ステップ②」の中の「求める人材の必要条件」で、
必要条件を盛り込みすぎていないか確認することを学びましたが、
覚えていますか。
採用基準を安易に下げるのは得策でありませんが、
「採用基準を見直す」のはおすすめです。
- 今の採用基準は、本当に自社が必要な基準になっているか。
- 不要な基準を盛り込んでいないか。
- 入社後に伸ばしても良い(または簡単に伸ばせる)基準はないか。
を、確認してみましょう。
採用基準にあれもこれも盛り込めば、
その条件に合う人材の数はおのずと減ってしまいます。
採用基準で無意味に入社のハードルを上げていたのであれば、
絶対に必要な基準、不要な基準を適切に取捨選択して、
求める人材が応募してくるようにしましょう。
次のページでは、
採用を成功させるポイントとして、
「どのように求職者にメッセージを伝えるか」
について学習します。

