Lesson4-6 給与制度

会社は社員に対して給与を支給します。

給与制度は、会社が社員に求めていることに対して、
社員がどのように応えたかを評価し、
その評価を反映したものになります。

また会社が生み出した利益の一部を社員に還元することで、
社員の意欲の向上と労働力の確保ができるのです。

一般的に「報酬」というのは、
給与などの金銭的なものだけでなく、
重要なポジションに就かせたり、
希望の職種に配置したり、
留学なども報酬に含まれます。

これらのような報酬なども総合的に考慮して、
金銭的な報酬である給与制度をどのように設計していくかを、
検討していきます。

給与の種類

給与の種類には主に以下のようなものがあります。

月例給(基本給)

毎月支給される給与のことです。

この後も解説しますが、労働基準法に則り、
月例給は毎月1回以上、定めた日に支給しなければなりません。

賞与

ボーナスのことです。

業績に応じて、一般的な会社では年に2回(6月・12月が多い)
支給されます。

業績や評価に影響されるため、
支給額が大幅に変わることもありえます。

退職金

退職金は一定の年数働いた後、
退職時に会社から支払われます。

働いた年数や、在職中の業績に応じて支給され、
長年の勤労に対する「功労報奨」として支払われます。


給与は上記の他にも、
臨時で支給される報奨金、インセンティブなどもあります。

給与制度 設計のポイント

給与制度を設計する時には、
以下の2点がポイントとなります。

経営理念に基づいた給与制度

給与制度は、経営者がどのような会社にしたいか、
どのような社風が望ましいか、を考慮して
決めていく必要があります。

例えば、業績によって大きな給与差が出る会社では、
競争が激しい社風になる傾向があります。

適切な給与水準

給与水準が他社よりも低い場合、
社員の確保が難しくなります。

優秀な社員ならなおのことです。

しかし、給与水準を上げすぎると、
今度は人件費が高くなりすぎてしまいます。

一般的な給与水準と、自社の業績や規模を鑑みて折り合いを見つけ、
適切な給与水準に設定しましょう。

労働基準法上の決まり

労働基準法上では、賃金の支払いはどのように義務づけられているのでしょうか。

主な決まりを確認していきましょう。

賃金支払いの5原則(労働基準法第24条)

次の5つの給与支払いのルールを、
「賃金支払いの5原則」と言います。

①通貨払いの原則

賃金は原則として、日本の通貨で支払います。

自社商品などの現物支給や、商品券などは認められません。

②直接払いの原則

賃金は原則として、本人に直接支払います。

中間に仲介者がいると、
賃金の搾取につながる可能性があるからです。

③全額払いの原則

賃金は全額を支払います。

会社の経営が厳しい状況であっても、
分割払いは認められません。

会社が勝手に賃金を天引きすることも許されません。

④毎月1回以上の原則

賃金は毎月1回以上支払います。

1ヶ月に1回以上であれば何回でも構いませんが、
2ヶ月に1度などは許されていません。

⑤一定期日払いの原則

賃金は一定期日に支払います。

毎月25日、毎月月末など、
支給期間を均等にすることで労働者の生活の安定を図るためです。


これらのルールにより、
年棒の場合も1度に支払うことはできず、
12分割して月々決められた期日に支払わなければなりません。

休業手当(労働基準法26条)

休業手当とは、会社の都合(「使用者の責に帰すべき事由」)で
社員を休ませた場合に、
その社員に対して支払わなければならない手当のことです。

休業期間中は、平均賃金の100分の60以上手当を支払うことが
定められています。

「使用者の責に帰すべき事由」とは、
例えば資材不足、経営不振、設備欠陥や検査などが該当します。

一方で地震や台風などの自然災害は不可抗力のため、
「使用者の責に帰すべき事由」とはならないので、
休業手当の支給対象にはなりません。

最低賃金法(労働基準法28条)

賃金は、都道府県別、産業別に最低賃金が定められています。

会社は、最低賃金を下回る賃金を支払うことはできません。

最低賃金は基本的に毎年改定されるので、
その都度、担当者は賃金の確認が必要となります。

定期昇給とベア

「定期昇給」とは、会社が決めた定期的に行われる給与改定のことです。

「ベア」とはベースアップのことで、
物価などの社会情勢に基づき、
基本給を一律に上げることです。

日本では、2月に行われる春闘がベースアップに影響を与えます。

ベースアップはバブル崩壊以降20年以上にわたって、
ほとんど実施されてきませんでしたが、
慢性的な人手不足と物価の上昇などにより、
近年はベアを実施する企業が増えてきているのが現状です。


給与制度について解説しました。

給与については社会人の経験があれば
誰でも何となくは知っているものですが、
どのように決められているのか、
どのような法律上のルールがあるのかを
今回理解することができたのではないでしょうか。

次のページでは人事のその他の業務について解説を進めます。